"untitled"

untitled

私は、1つの本を手に取った。

その本の表紙には、タイトルなんて書かれておらず、ただ、いくつもの額縁が描かれていた。

本を開くと、表紙にあった額縁に、いくつもの絵が描かれていた。

最初はぼやけていて何の絵なのかは分からなかったものの、何ページかめくると徐に色づき、鮮明になる。

それらは、音を奏でていた。

そうか、これは今まで見てきた様な景色であり、感じてきた音なのか。

もう戻ることはできなかった。

目の前には、物語が広がっていた。

僕は君と出逢った。

君と出逢ってから、楽しいことや苦しいことがたくさんあったけれど、

そのどれもに、愛は存在していた気がする。

愛がなければ、ここまで来られなかった。

いつも、いつでも、君は僕の隣にいた。

愛があれば、君がいれば、君といれば。

どこまでもいける気がするんだ。

手を繋ぎ、肩を組み、共に歩いていく。

集い、騒ぎ、共に笑う。

奇跡のような、光り輝く君との時間がとても楽しかった。

僕らの出逢いには、きっと意味があるんだ。

僕は君に、何が出来ているかな。

この世界では、僕はちっぽけな人間なんだ。

それでも、君を守りたいと思う。

これからもずっと、守ってみせるよ。

僕は、夢でも君と笑っているんだ。

この世界でも、どこか違う世界でも、

僕にとって君はかけがえのない存在になった。

そして、強く思うんだ。

生まれ変わっても、君を失いたくない。

ずっと一緒にいよう。

心配しないで。

僕が守るよ。

だけど君は、僕から離れていってしまった。

あの時こうしていれば、と後悔することしかできない。

これからもずっと一緒に過ごして、たくさんの景色を見たかった。

どれだけ後悔しても時間は戻らない。

分かってはいるけれど、僕から何か大切なものが欠け落ちたようで。

これまで感じていたこの世界の温かさを感じられなくなった。

凍えるほど冷たい世界だ。

悴んだ僕の身体は、思い通りには動かず、

今もまだ、あなたが去っていったこの場所から動けずにいる。

足元しか見られなかった。

力を振り絞り、前を向いた先に、微かに光があった。

小さな光も、今の僕にとってはささやかな幸せな気がした。

誰かと一緒に何も考えずに笑い合ったり、

どんなに小さい希望でも、明日を照らす力は大きく、僕に力をくれる。

ふと、自分の振り返ってみる。

自分の人生を、ありのままの僕を。

ずいぶんと長い間、ふらふらと歩いてきてしまった、と思う。

たくさん悩み、苦しみ、楽しいことばかりの人生ではなかったけれど、

振り返ると様な景色が浮かんでくる。

驚くことに、辛く悲しい景色も、明るく楽しい景色も、同じくらいに思い出せる。

そのどれもが、光り輝き、色褪せない。

今となっては、その記憶のすべてが愛おしく感じる。

たまには、振り返ってみるもんだな。

目の前には、何もない。

僕の未来に、何が待っているのか、今の僕には分からない。

これまで歩いてきた道。見てきた景色。

これから作る、道。

この先には、どんな道が続いているのだろう。

まだ見えない未来。

どんな出逢い、どんな別れがあるかは分からないけれど、思いのままに歩いていこう。

まだ旅は、続いている。

この物語が終わる次のページに、こんなことが書かれていた。

のんびりいこうか。笑って、僕ららしく。

そして、その後のページは真っ白だった。

ああ、この物語は終わらないのだ。

本を閉じ、私は日常に戻る。

私の、私自身の、未来への大きな第一歩、untitled。

この本を携え、私は未来を見るのだ。

心配しないで。

私が守るよ。

未来は、真っ白だ。

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